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第一魔導理論T

   パンタフ魔導学院 第2大講義室

   講師:カイハス・リック・セクター魔導師


※注:本文では、講師たっての希望により、読み易さを重視して『魔導呪術法式詠唱文句』を「魔導術」「魔法」「術」等の略称で記載。


【魔導構造と理論】

 はい。皆さんこんにちは。皆さんはこの度、晴れて「魔導波」の試験に合格し、魔導士として今回この授業を参加されているわけですが、さて、みなさん。突然ですが問題です。「魔術士」と「魔導士」の違いとは何でしょう?
 まぁ今さら聞くまでもない事ですが、改めて解説すると、魔術士は既存の魔法を覚え、使用する人々の事を指します。
 つまり、範囲を大きく取れば魔術士とは、それを専門的に扱う人以外にも、覚え、使う事さえ出来れば、神殿の神官の方々も、剣を下げて市内を巡回する警備兵も、家で家事をする主婦の方々も、魔術士の一人であると言う事が出来るわけです。
 これに対して、魔導士とは魔法を分析し、その構造を理解して、既存の使い易く構築された魔法に捕らわれず、その場、状況に合わせた魔法を新たに作り出せる人々の事を指すわけです。
 この第一魔導理論は、その本質中の本質。ただ「術」を覚えるだけではなく、魔導術の構造を熟知し、いずれは自分にあった「術」を自分で造りあげられる様に勉強していく講義です。

 さて、今度は質問です。
 皆さんは魔導士が使う「術」について、どんなイメージをお持ちですか?
 一概に「これ!」と揃う事はあまりないとは思いますが、大半の方は、指先から炎を噴き出す魔導士の姿を想い描いたと思います。
 これはあながち間違いではありません。
 既存の魔導術の半分近くは攻撃に転用する事が可能な「攻撃呪文」に分類され、基本的な、世に言う「四大精霊」を媒介にした「精霊系魔導」の中で、最も攻撃に適しているのが「火」で有る事に違いはないのですから。

 そこで本講義は魔導中の基礎である「火」を取り上げ、これを中心に魔導の構造を解析していく事にします。


【合成魔導と思念、魔導韻】

 さて、此処にいる皆さんなら、誰しも家庭なり神殿学校なりで「着火」の呪文を教えて貰っているとは思いますが、この基本中の基本であるこの「着火」ですら、複合された魔導であることを知っている人は意外に少ないでしょう。
 この「着火」は「発火」の呪文と「付着」という二種類の魔導を融合させ、蝋燭などに火を付けるのを目的とした簡単な魔法とさせた物です。
 このような簡単な物から、大規模な儀式魔導まで、その殆どが単利性の簡単な魔導の複合体なのです。

 魔導は「魔導印(まどういん)」と呼ばれる、魔力を収束する図形と、具象化した魔導効果をイメージする「思念」によって成り立っています。
 この内「魔導印」は「魔導韻(まどういん)」と呼ばれる音声に置き換える事も可能です。

 皆さんも経験があるでしょう?
 初めは指先に意識を集中して、空中に印を結び(描き)ながら呪文を唱える事で蝋燭に火を付けていた物が、呪文を唱えるだけで火が付く様になった事とか。
 これが「魔導韻」と呼ばれる物です。
 さらに上達してくると、意識を集中するだけで効果を発揮できるようにも成りますが、これも魔導韻の一種で、意識の中で読まれた魔導韻ですらも、魔力は反応します。
 つまりこれが先に述べた「思念」と言う事になります。

 さて、この「思念」ですが、魔導韻も発動した効果を想像するのも、全てこの術者の「思念」。
 魔導の極意が「精神力に始まり、そして終わる」というのも、これが原因なのです。


【人体の魔力】

 さて、よほど真面目な人でもない限り、一度はやった事があると思うのが、「着火」の魔法で何処まで火を大きく出来るか、だと思います。
 ですが、大抵の人は指先の火が一回り大きくなった程度でしょう。
 普段、着火をする時、指先に集まる魔力は身体全体の内、手の魔力の1/3程度。
 思念によって魔力を収束する事で、その魔力は1/2位まで収束する事が出来ますが、その後、軽い目眩や倦怠感、手の痺れを感じる事もあると思います。
 これは、手の魔力が急に消耗した事で、それを補う為に身体の他の部分の魔力が一気に集中し、身体全体の魔力不足が起こり、生体バランスを崩して起こる現象です。
 これらの現象は、皆さんが魔力を効果的に扱う鍛錬を重ね、身体全体や、大気中から少しずつ魔力を補う事を覚えれば解決する事が出来ます。

 余談ですが、着火の魔法でどこまで火は強く出来ると思いますか?
 実は、理論上この火は無限に大きくなると考えても過言ではありません。
 ただ、この「着火」の魔法による攻撃ではあまり効果的ではないので攻撃呪文として分類されていないのです。


【魔力の比例威力】

 さて「着火」の魔法の解析をしましょう。
 先にも述べた通り「着火」は「発火」と「付着」によって合成されていると申しましたが、この内「付着」は「魔導によって発生した効果を目標物に定着させる」という効果を持つ魔導です。
 この呪文はありとあらゆる攻撃魔法に組み込まれており、覚えておくと良いでしょう。

 続いて「発火」です。
 この「発火」の魔法は魔力によって「火」を生成する魔法ですが、この火の威力は、通例、魔力を注ぎ込めば注ぎ込む程大きくなります。
 ですが、実はこの「火」は、二つの「要素」を持っており、普通にこの魔法を使う場合は、この要素はX=Yの比例式を取ります。

 その要素とは「大きさ」と「温度」。

 ここに一本の木が生えているとしましょう。
 通常、生木は水分を多量に含んでおり、燃えにくいとされていますが、魔力をつぎ込めばこれを一瞬に炭化させる事も可能です。

 ですが、その木がもし小さかったら?
 巨大な炎を作り出しても無駄になってしまう部分も多分に存在しますね。
 そこで「火」の要素を操作するのです。

 「温度」の要素を上げれば、同じ大きさの火でも、高熱の炎を作り出す事が出来ます。
 同じく「大きさ」を上げれば、燃やすのに充分な温度の炎を大きくする事で、より大きな木を燃やせます。
 上手く操作できれば、より効率的に魔力を消耗することなく燃やす事も可能となるわけです。

 では、どうやって操作するのか。
 呪文によっても或る程度操作する事も出来ますが、「発火」程の短く、簡単な魔導ともなると、逆に発音や印の細かい分解、再構築が必要となり、効率的ではありません。
 そこで登場するのが先程述べた「思念」です。
 イメージする火を、小さいながらも力のある火にするのか、同等の力でも大きな物にするのか。これによって火力は変わってくるのです。


【合成する魔法による効果の変化】

 さて、或る程度具体的な話になってきたところで、実際に魔法の合成を考えてみましょう。
 とは言っても、今回は火を媒介にした呪文バリエーションの紹介程度ですが。

 と、その前にこの『着火』では攻撃魔法として力不足ですね。
 そこでまず、『着火』に『倍化』と言う魔法を合成します。
 この『倍化』は魔法を構成する要素の内、指定する物の効果を倍にする事が出来る魔法です。
 この手の攻撃魔法では『倍化』や『倍増』等は複数の対象や威力増加として多用されるので、覚えておきましょう。

 では『着火』に、『線状』という魔法を合成します。
 これで『炎線』(ファイアー・ボルト)という魔法になります。
 この『線状』という魔法は、手元を離れた魔導効果が、一定時間引き続き発生する魔法です。
 この状況で魔法は『炎線』と呼ばれる物になり、火は手元から離れても対象までの間に炎の線を作るという形に変わります。

 次は『球状』という魔法との合成例です。
 これで『炎弾』(ファイアー・ボール)になります。
 これで作り出された『炎弾』は炎の玉を相手に向かって放出する、イメージでも多い魔法の1つですね。
 ちなみにこの魔法はまだ未完成で、さらに『爆発』等が組み込まれるのが通例です。

 さてどんどん行きましょう。
 『剣化』と合成する『炎剣』(ファイアー・ソード)
 『鞭化』と合成する『炎鞭』(ファイアー・ウイップ)
 『螺旋』と合成する『炎渦』(ファイアー・ストーム)
 『吐息』と合成する『炎息』(ファイアー・ブレス)

 等々。と、此処まで紹介して判ったと思いますが、合成する魔法には形状を示唆する魔法が多いんですね。

 で、ここでさらに応用編。
 以上に挙げた攻撃用魔法は6つですが、ここで水系魔法の『氷結』を覚えたとしましょう。
 『着火』の代わりに『氷結』を組み込めば、利用出来る魔法は7つから14に一気に増えます。
 (着火・炎線・炎弾・炎剣・炎鞭・炎渦・炎息に氷結・氷線・氷弾・氷剣・氷鞭・氷渦・氷息の14)

 まぁこれはあくまでも例ですので、こんな魔法の覚え方をする人は居ないのでしょうが、この例を見ても判る通り、多くの魔法はもっと基礎的な、単一にして単純な魔法を組み合わせる事で成り立っています。

 以上の例で挙げた物同士でもまた合成する事により新しい魔法が生まれます。
 単純に考えれば、1つの魔法の為に2つの魔法が、その2つの為に4つの魔法が、その4つの為に8つの魔法が必要…と言う事になるわけです。


【魔法の運用】

 現在広く神殿で教えられている魔法は「口語魔法」と呼ばれています。
 これはその名の通り、口語…つまり紅の街道を中心とする商業用語から派生した大陸の共通言語で魔法を行使する為に「着火」の様に「発火」と「付着」を覚えていない人にも魔法が使える様に魔導語を改造し、広く散布した物です。

 同じように、合成魔法も、無論、上位に位置する魔法を覚えているならば、下位の細かな魔法を覚える必要はないでしょう。

 ですが、その魔法を構成する魔法を覚え、さらに自分独自の、その場、その状況にあった、無駄のない、効率的な魔法を運用する事こそ、魔導士の『魔導』士たる所以なのです。

 この世に存在する魔法は1万とも10万とも言われています。
 それは、魔導の根源たる「魔力」が万色の、不変にして万様たる力であるからです。
 そして、その魔法を構築する「基礎魔法」はその数十倍あると言われています。
 たった1つ、最も自分が得意とする魔法を覚える。まずはそれだけを考えてみてください。
 そこに辿り着くまでに幾つの魔法が必要なのか、またそれらから生み出される新たな上位魔法はどれだけ存在し、その得意とする魔法はどれだけの変化を生み出せ、バリエーションを増やす事が出来るのか。

 一人前の魔導士となるために、この講義はそこから始めていきたいと思います。

 それでは今回は此処まで。ごきげんよう。



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